現場主体の学びへの転換
OJL(On the Job Learning)は、日々の業務そのものを学びの場とし、実践を通じて継続的に成長する人材育成手法です。従来のOJTに加え、日々の経験や対話、振り返りを通じて「より良い仕事の進め方」をチームで学び合い、組織全体の実践力を高めます。
業務目標を共有するチームで、進捗の見える化や定期的な振り返りを行い、経験・知識・ノウハウを共有することで、学習する組織文化を醸成します。また、チーム運営と学びを支援する「OJLファシリテータ」が対話を促進し、継続的な改善と人材育成を推進します。
OJTとは
仕事をしながら必要なスキルや知識を学ぶ。仕事をしながら仕事を覚える。仕事を通じて能力を高める。しかし、実態は企業ごとに解釈はバラバラではっきりとした方法論はない。だから、OJTはシステマティックに計画・統制・実施されたものにはなりにくい。
ただ仕事をやらせているのであれば、仕事なのか、訓練なのかわからない。どう教えてよいかも分からず、効果も測定しにくい。企業側はOJTを実施して、人材育成に力を入れているつもりでも、育成される社員のほうでは、指導されているという意識が ないのが実態ではないか。
一方、教える側の先輩たちも、日常業務に忙殺されて教育しようとする余裕がない。自分自身もきちんと教えられた記憶がないから、後輩を教える自信がない。
以上が現在のOJTの実態ではないだろうか。
このような状況でOJTを再構築しましょうと言っても、すでにしみついた概念を新たにすることは中々むずかしいと思われる。現場での日常の仕事はもはや訓練とは言えないのではないか。
計画や統制・実施と言った明確な目的と手順が無いものは訓練とは言い難い。仕事の現場は、実際の仕事を通して経験し、経験を振り返り、新しい手段や対応を考え、試行して行きながら仕事の成果と能力の向上を目指して行くと言う、自立的な学びの場でなければならない。
従って、今後提唱すべき概念としてはトレーニングではなく、ラーニングである。
つまり、OJTからOJL(On The Job Learning)である。
しかし、最近の世界の流れは、In The Job Learning(IJL)へと進行している。Leaning In The Flow Of Workともいわれて、仕事に学習を付加するのではなく、業務に隠れている「学習の機会」を活用したり、仕事の中に埋め込まれた事柄から学習することである。いつでも、どこでも学ぶことが出来るという事を具現化することが大事になってくる。
最終的にはラーニングエコシステムの構築が必要となる。


何故OJL(オンザジョブラーニング)か
ビジネス環境が激しく変化する中で、競争力のある製品やサービスを提供し、顧客から高い信頼を獲得するためには、現場第一線の組織や人材の能力向上が必須となっている。
従来のOJTでは、この変化に対応することは難しい。変化に対応するためには、継続的な学習が必要である。学習は仕事場とは離れた場所に行かなければできないという事はない。毎日の仕事を通じて「学ぶ」ことが出来れば、即、実践力が高められることになる。学習の素材は「日々の経験」であり、学習は「日々交わされる会話や対話」を通じて行われる。人は一人では成長できない。又、その術を持っている人は少ない。従って、チームや組織のメンバーとの対話やコミュニケーションを通して、教え合い、学び合うという学習する文化を醸成することでこれが可能となる。
OJLの定義
OJLは座学で学習するのと異なり、毎日の仕事をしながら「どうすればもっと上手くできるか、もっと早くできるか、もっとたくさんできるか」を学習し続けることである。
OJLを実践するためには、以下のような方法で実践する。
- 業務目標を同じくする10人前後のチームを編成する。
- スクラム的な仕事の進め方を基本とし、業務の進捗や対応が全員に見えるようにする。
- 毎日、毎週のミーティングでの仕事の振り返り(reflection)の場が「学習の場」となる。対話を通じて互いに学び合い、教え合う文化を醸成していく。学習素材は自分やメンバーの「経験」であり、組織に蓄積された「知識・ノウハウ」である。
- 上記の活動を主導するリーダを育成・配置する。
その役割の一つはチーム内のコミュニケーションの活発化を促し、調整や合意形成などスムースなチーム運営を主導するチームファシリテーションである。
もう一つは、日々の仕事の中から発生する事象から学習すべきことを抽し、メンバーの学びを支援するラーニングファシリテーションである。
これらの二つの能力を持ったファシリテータをOJLファシリテータとして位置づけ、OJL推進の役割を担う人材として育成し、組織能力と人材の能力向上を図る活動をOJLと定義する。


OJLによる効果
ある企業のOJL実証から得られた効果
チーム運営に関する効果
- コミュニケーションが活発化し、チームが活性化した。
- メンバーのモティベーションが向上し、目的達成意欲が向上した。
メンバーの学習意欲に関して
- 学習することに意欲的になった。
- 他のメンバーの良い点を学ぶようになった。
- 他のメンバーに知識を伝えるようになった。
- 研修への参加意欲が増した。
約1年の実績ではあるが職場の活性化、仕事や学ぶことへの前向きな状況が生まれている。
職場のエンゲージメントが高まっているように見える。エンゲージメントは生産性を高め、働く意欲、成長する意欲、目標達成への意欲を向上させると言われている。
組織の成長と人の成長が同時並行的に行われることになる。
OJLが目指すもの
一般的に次のように言われている。
- エンゲージメントをチーム内で行われる「社会的学習」や「協調的な交流」ととらえ、それが活発なグループの方が、生産性が高くなる傾向があると言われている。
- 「社会的な学習」とは、グループでの経験や観察を通じて新しい考え方を学ぶことを意味し、それはやがて「行動規範」やその遵守を促す「社会的圧力」の形成につながっていくもの
- 「協調的な交流」も、信頼感の醸成を通じて、他人との関係を重視する価値観を高め、同じく社会的圧力の土台になる。すなわち、結論として、「エンゲージメントは文化をつくる」事になる。
OJL活動はチーム内の継続的な学習、活発なコミュニケーション、相互に信頼できる関係をつくることで、上記で述べられた「エンゲージメント」を高めることになる。
活動から醸成される「文化」は、組織と個人が互いに成長を支援し合うことを最重要課題に位置付ける文化である。
「OJL]は現場、職場の活性化を図り、個人も組織も同時成長できる仕組みを構築しようとするものである。