一般社団法人IT人材育成協会

Association for IT Human Resources Development

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shimoda株式会社アイテック
下田 明(しもだ あかり)氏

教育研究企画本部 セミナー企画部
主な担当:ヒューマン系研修企画担当

 

 

 最近、「研修の目的」が曖昧になっていることについて考えることが多くなりました。

 研修を受講後、どんなに優れた講師が登壇し、感動するような学びがあったとしても、3日経つと感動も冷め、1週間経つと内容をほとんど忘れてしまうというような経験ってないでしょうか。いかにも勿体ない話ですが、たいていの研修は受講生が自ら学びたいと希望したものではなく、会社から与えられた研修なので、受講生のモチベーション維持が最も難しく、本当の意味で学びになっているのかどうか疑問を感じることがあります。

 特に新人研修は、会社として情報処理技術者試験の資格をとらせたいという会社側の思いとは反対に、受講する本人の意識が低く、会社との乖離が大きくなってきていると思います。また、ゆとり教育の弊害なのか「仕事で必要だから勉強する」という研修目的ではなく、ただのやらされ感で受講している新人が増え、近年ITエンジニアのレベルが落ちてきているように感じています。試験対策講座をやるからには合格率にかかわるので、講師はなんとか受講生の尻を叩きながらでも勉強させる必要があり、講師はその点で苦労しています。
 どんなにIT技術が発達しクラウドが主流になろうとも、やはり基本的な知識となる「コンピュータの基礎」や「ネットワークの基礎」などは時代が変わっても知っておかなければならない基礎です。最近はそこに価値観や目的を持たなくなった企業も増え、IT業界の人材育成レベルの危機感を感じています。

 また、「流行」のヒューマン系研修の提案を要請されることがあります。「流行」ではなく、社員の課題をクリアするための教育でなくていいのかな?と、その研修目的に疑問を感じるときがあります。当然のことながら、こちらに入ってくる情報が乏しく、講師にも詳細な依頼内容をお伝えできないので、無難なカリキュラムをたたき台として提案するしかないときが時々あります。結局金額のコンペになり、いつしか「教育」することよりも「実施」することの方が研修の目的になっている段取りに矛盾を感じます。そもそも研修ニーズが曖昧なのに本当に研修をやる必要あるのだろうかと思うときもあり、果たして人材育成について、そんないい加減なことでいいのだろうかと疑問を感じます。
 その会社の社員にとって、社内の教育担当者が人材育成に熱心かどうかで、その会社の社員教育の質が左右されると言っても過言ではないでしょう。

 ヒューマン系の講座企画の場合、たまに勘違いも起こります。例えば、「コーチング研修」の案件を営業からもらい支援依頼を受けるのですが、依頼内容をお客様に再確認すると、顧客へのヒアリングとコンサルが不十分で、必要だったのは実は「コーチング研修」ではなく「マインドモチベーション研修」だったことが分かりました。目的が不明瞭だったり、思い込みで手配を進めていると、二度手間になるのは講師であり、講師へのアサインや調整をしている立場としては実に非効率的であるとともに、講師との信頼関係に影響をも及ぼすことにもなりかねません。

 やはり普段から教育に携わる者として、社員の人材育成課題について、もっと具体的に現状を理解し、「何のためにその学びが必要なのか」という研修の目的を明確にしなければなりません。ただ「やらなければならないから」というやらされ感ではなく、「その学びがどう仕事で役立つのか」という受講生の動機付けにつながるような「納得のいく研修の目的」をきちんと定めてから、企画をするべきだと常々思っています。